階段の有効幅、蹴上、踏面と手すりの寸法。

住宅の階段をリフォームなどで製作する場合は、いろいろな寸法を決める必要があります。

住宅の階段の寸法は、建築基準法で最低限守るべき寸法が定められています。

階段を制作するときの、手すり、有効幅、踏み面、蹴上げ、などの寸法についてご紹介します。

                           りょう(DIYアドバイザー)

目次

建築基準法で定められている寸法

建築基準法では、最低限守るべき寸法として下記の図のように定められています。

踏面寸法

上記の図の足を乗せる部分を踏面(ふみづら)と呼んでいます。

この踏面の寸法は、150mm以上となっています。

上記の図の三段廻りなどのように、階段の踏み板の場所によって幅が異なる場合は、狭い方から30cmの位置の踏み板の幅を踏面寸法としています。

蹴込みがある場合

住宅の階段の踏み板には集成材が多く使われていますが、この集成材の踏み板の先が下の図のように少し出ている場合があります。

この部分を蹴込み(けこみ)と言います。

この蹴込みがある階段の場合の踏面の寸法は、蹴込みの出の寸法分だけ差し引かれます。

蹴上げ寸法

上がるために足を上げる高さを蹴上げ(けあげ)と呼んでいます。

蹴上げの寸法は、230mm以下と定められています。

有効幅

階段の幅の部分を有効幅(ゆうこうはば)と呼んでいます。

階段の有効幅は750mm以上としています。

なお階段には通常手すりが付いていますが、この手すりの壁からの出幅によって有効幅の見方が変わってきますので注意してください。

手すりの出幅が10cm以下

壁から手すりの一番出っ張った部分までの寸法を出幅と呼んでいます。

この出幅が10cm以下の場合は、手すりの出幅寸法は考慮されず、階段の幅がそのまま有効幅となります。

手すりの出幅が10cmを超える

上記の図のように、手すりの出幅が10cmを超える場合は、階段の幅から、超えた寸法を差し引いた寸法が有効幅となります。

例えば、階段の幅が80cm、手すりの出幅が12cmの場合、有効幅は以下のようになります。

有効幅=80cm-2cm=78cm

階段の幅から、10cmを超えた寸法(2cm)を差し引いた、78cmが有効幅となります。


踊り場

踊り場は、階段の途中に設置された平らな広い場所のことです。

踊り場の幅は、階段の幅と同じ規定となっており、有効幅が750mm以上となっています。

また階段に設置された手すりの場合と同様に、手すりの出幅によって有効幅の見方がが変わってきます。


踊り場には階高(かいだか)という基準値が設けられています。

階高とは、一般的には建物の中の各階の高さを表しています。

一つの床の床面から次の階の床面までの高さのことになります。

ここで言う踊り場の階高とは、階段の始まりから踊り場までの高さを表しています。

建築基準法では、住宅の踊り場の階高は、4m以下と定められています。

踊り場の階高が4mを超える場合は、途中に踊り場を設ける必要があります。


以上の踏面寸法、蹴上寸法、有効幅寸法、階高寸法が、建築基準法で定められている最低限守るべき基準の寸法となります。

リフォーム等のDIYで階段を製作される場合は、建築基準法の基準値を最低限とし、これより安全側になるように寸法を決めるようにして下さい。

また建築基準法で定められている踏面と蹴上の基準値の寸法の場合の勾配は、上記の図のように、約57度となります。

勾配につきましては、45度前後とするのが安全でよいでしょう。

一般的な住宅の階段寸法

現在の一般的な住宅の階段の寸法は以下のようになっています。

踏面寸法 : 200~220mm

蹴上寸法 : 200~220mm

有効幅  : 800~1000mm

勾配   : 42~48度

蹴込み寸法: 20~30mm


以上が現在の一般的な住宅の階段の寸法となっていますが、勾配についてはもっと緩やかな方が望ましいと思います。

ただ現在の住宅に関するいろいろな環境等でやむを得ないところもあります。

階段を製作される場合は、なるべく安全になるように工夫してみてください。


手すり

建築基準法では、転落防止の観点から階段や踊り場の両側に、壁等を設けなければならないことになっています。

ただし手すりが取り付けられている部分については、壁等を設けなくても良いこととなっています。

また安全のため、階段には少なくとも片側には手すりを設けなくてはいけないことになっています。

ただし1m以下の階段には、手すりを設ける必要はありません。

次に手すりを取り付ける場合の寸法等についてご紹介します。

手すりの高さ

階段に取り付ける手すりの高さについては、建築基準法では、特に規定はありません。

一般的な手すりの高さは、下記の図のように踏面の中央あたりから850mm前後とされています。

利用者が高齢者の場合は、少し低くして750mm前後が良いでしょう。

なお手すりを使われる方が決まっている場合は、使われる方が一番握りやすい高さに取り付けてください。

なお建築基準法では階段に取り付ける手すりの高さには規定はありませんが、2階以上に設置されているバルコニーや屋上に手すりを設ける場合は、1100mm以上という規定があります。


壁に取り付ける手すりの場合は、丸棒手すりを取り付けると良いでしょう。

一番握りやすい太さは、直径が35mmとなっています。

種類も豊富で、取付金具や連結金具などの種類もそろっています。


なお詳しい手すりの取り付け方につきましては、下記の記事をご参考にしてください。

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手すり子の間隔

壁の無い部分に手すりを取り付ける場合は、転落防止のための措置をする必要があります。

方法はいろいろありますが、手すり子を使う場合の間隔についてご紹介します。

手すりと階段の踏み板をつなぐ比較的細い棒を手すり子(子柱)といいます。

転落防止のために、手すり子の間隔は110mm以下と規定されています。

110mmは、幼児の頭がすり抜けない寸法になっています。

滑り止め

階段で滑ったりすると転落の危険があります。

特に高齢者の場合は、大きな怪我となってしまいますので、階段の踏み板には滑り止めを取り付けるのが良いでしょう。

集成材等で作られている踏み板には、最初から滑り止めとしてノンスリップ加工が施されているものもあります。

ノンスリップ加工とは、踏み板の踏面の前側に1本~3本のミゾが掘られたものです。


このミゾが足が滑るのを防いでくれます。

ただこのノンスリップ加工は、滑り止めとしての効果は少し弱い気がします。

滑らない素材で製作された市販品が多くありますので、その中から選んで取り付けるのが良いと思います。

市販されている滑り止めには、幅の狭いテープ状のものや角にL型に貼るもの、幅の広いマット状のものなどいろいろあります。

選ぶときのポイントとしては、なるべく薄いタイプのものを選んでください。

厚すぎてしまうと、かえってつまづきの原因となることがあります。


また滑り止めを取り付けた場合は、階段の昇り降りするときに、しっかりと滑り止めを踏む習慣をつけてください。

しっかり踏まないと、つま先を引っ掛けてしまうことがあり、危険な場合があります。

特に降りるときは、しっかり滑り止めを踏むようにしてください。


ベビーフェンス

小さなお子様がおられるご家庭では、幼児の階段での事故防止のためにベビーフェンスを取り付けるのが良いでしょう。

幼児が階段に近づかないように、階段の入口にフェンスを設置します。

上記の図のように柵を設けてご自身で製作される場合は、階段の手すり子と同様に柵の間隔は、幼児の頭がすり抜けない11cm以下としてください。

ご自身が製作される場合の簡単な方法は、下の図のように取り付ける位置の両側に桟を取り付けて、フェンスを落とし込む方法です。

ただしこの方法ですと壁にキズをつけることになります。

キズをつけない方法としては、市販品のベビーフェンスで使われている突っ張り式です。

階段の種類

住宅の階段の主な昇降方法別の種類には以下のようなものがあります。

直階段

直階段は曲がらずに真っ直ぐに昇り降りする階段です。

比較的広いスペースを必要とする階段の形となります。

かね折れ階段

かね折れ階段は、途中で90度に折れ曲がっている階段です。

折れ曲がっている部分は、踊り場としたり、三段廻り、二段廻りとする場合もあります。

折り返し階段

折り返し階段は、途中で180度向きを変えて昇降する階段です。

折り返す部分は踊り場とします。

階段部分と踊り場の両側に壁等を設けることによって、一番安全な階段の形とされています。

廻り階段

折り返し部分を二段廻りや三段廻りとしたものが廻り階段です。

廻り部分の踏み板の狭い部分は利用しにくく、好ましい形とは言えません。

廻り部分をフラットな踊り場とした折り返し階段とするのが良い方法です。

ラセン階段

ラセン階段は、写真のようにらせん状となった階段です。

狭いスペースに設置できるのがとくちょうです。

素人での製作は難しいので、プロに製作は依頼したほうがよいでしょう。


危険な階段

階段を製作する上で、これだけは避けていただきたい作り方をご紹介します。

非常に危険で、大けがの原因になりますので絶対に避けて下さい。

専門家のプロの場合はあり得ませんが、素人の製作にはありがちなので気を付けてください。

① 床が抜けている

上記の図は、2階建ての場合で、2階の廊下の一部が抜けている状態です。

2階の廊下の部分から階段の1段目が始まっているケースです。

階段の作り方で一番危険なやり方です。


廊下を歩いていて踏み外してしまえば、階下まで転落してしまう危険があります。

特に夜間などの足元が暗い時間は、非常に危険です。

このような作り方は絶対に行ってはいけません。

構造上作らざるを得ない場合は、必ず柵などで囲って簡単に立ち入れないようにしてください。

② 階段が飛び出している

上記の図の場合は、下ってきた階段の最後が廊下に飛び出しているケースです。

この場合も非常に危険で、足元が暗い場合などは、つまづいて転倒の危険があります。


上記の①と②のケースは、事前の設計ミスや計算ミスで起こります。

蹴上、踏面、勾配と設置スペースの関係をしっかりつかみ、ミスの無いようにして下さい。

2階の廊下を削ったり、飛び出したりしないように、きっちりと収まるようにして下さい。


最も安全な方法としては、階段の始まる前にアルコープを設ける方法です。

アルコープとは、廊下から階段が始まる途中に設けられた平らな部分のことです。

上記の図のように、一般的には廊下から階段が始まりますが、その途中に平らで出来るだけ広く平らなスペースを作ります。

このスペースの部分をアルコープといいます。

アルコープを設けた場合は、手すりも同様にアルコープの部分から取り付け、階段の手すりと連結するのがベストな方法です。


アルコープがない場合は、降り始めるときに、階段の足元と手すりの両方に意識をもっていく必要があります。

アルコープを設ければ、安全な平らな場所で手すりをしっかり握り、それから足元の階段に意識を集中して降りることができます。

特に高齢者の利用の場合、転倒、転落のリスクの軽減につながります。

アルコープを設けるにはその分のスペースが必要になりますので、難しい場合もあるかと思いますが、設計の段階で検討してみてください。

③ 蹴上寸法が不揃い

これも設計ミスでおこるのですが、階段の一番下、又は一番上の蹴上寸法が、途中の寸法と変わってしまうケースです。

設計ミスや計算ミスなどで寸法が合わず、床面に合わせるために起こります。

これも危険で、いきなり高さが変わると踏み外したり、つまづく原因となります。

階段の蹴上寸法は、最初から最後まで同じ寸法にしなければなりません。

まとめ

階段は、住宅の中でも一番事故が起こりやすい場所です。

階段を製作される場合は、建築基準法で定められている寸法を最低限とし、それより安全になるように作りましょう。

また、階段の作り方の基本を無視したやり方は行わないようにしましょう。


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参考:九州福岡で高断熱・高気密な家づくり-with HOME

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この記事を書いた人

DIYアドバイザー、フォトマスター2級、コーヒーコーディネーター
(趣味)
DIY、釣り、写真、スケッチ、旅行、山登り、キャンプ

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 分かりやすいですが、蹴上と踏面の数字は正確ですか。管理業務主任者試験の受験者ですが。

    • コメント頂きまして有難うございます。
      建築基準法に書かれている数字をそのまま記しております。
      よろしくお願いします。

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