木材の基本的な継ぎ方の種類58個。
木材同士の接合については、木造建築の分野でも家具、建具
の分野においても古くから行われており、いろいろな接合方法があります。
特に木造建築分野においては、釘や金物を一切使用しないで
木材同士を接合する方法は日本独特の技術となります。
家具や建具の分野においてもお互いを複雑に加工し
組み合わせる接合方法が行われています。
家具や建具では木材のみということではなく、接着剤や釘、
木ネジ、金物なども使用しながら接合を行っていきます。
接合する場合に、お互いの接合部分を凹凸に加工し接合する
ことによって強固となり、また見た目も大変美しい仕上がりとなります。
木材同士の接合部分を凹凸に加工する仕口(しぐち)や
継手(つぎて)について種類と加工方法についてご紹介します。
この記事を書いた人:りょう(DIYアドバイザー)
この記事の目次
ほぞつぎ
「ほぞつぎ」は家具製作や木工においてもっともよく
使われる接合方法で、テーブルの脚と幕板、脚と貫、貫同士
の接合などに使われます。
「ほぞつぎ」は、一方の材料にほぞ穴、もう一方の材料に
ほぞ加工します。
ほぞ穴にほぞを差し込んで接合するもので、特に角材同士の
接合の仕口として多く使われる基本的な接合方法です。
「ほぞつぎ」の仕口の加工方法には次のようなものがあります。
片胴付き 二方胴付き
三方胴付き 四方胴付き
小根付き 面腰ほぞ
二枚ほぞ 二段ほぞ
割りくさびほぞ 蟻形包みほぞ
鎌ほぞ くさび止ほぞ
上記の内の「くさび止ほぞ」は組み立て、分解式の棚などに
使用しますが、穴はゆるめに加工します。
その他のものは、固定しますので「ほぞ穴」の大きさは
「ほぞ」と同じくらいの大きさとし、押し込んでちょうど
入るくらいに加工し、接着剤で固定して接合します。
相欠きつぎ
「相欠きつぎ」は、お互いの材料の厚みの半分づつを
欠き取って組み合わせたものです。
簡単な枠の組み合わせ、テーブルやイスなどの貫の
組み合わせ、簡単なパネルの枠の組み合わせなどに
使用される接合方法です。
「相欠きつぎ」は、加工は簡単ですがお互いの接合強度は
弱いので、接着剤、釘、木ネジを使って補強をします。
「相欠きつぎ」には以下のような種類があります。
かね相欠きつぎ
T形相欠きつぎ
十字相欠きつぎ
包み蟻形相欠きつぎ
だぼつぎ
「だぼつぎ」は、接合する両方の材料の接合面に穴を開け、
その穴に「だぼ」と呼ばれる圧縮して作られた丸棒を
打ち込こんで、接合する方法です。
「だぼつぎ」は生産性に優れており、大量生産方式を採用
している家具メーカーの家具部材の仕口として多く使われて
いる継ぎ方です。
ただし、「だぼつぎ」の場合は、「ほぞつぎ」と比べて、
より精度の高い加工が必要になってきます。
接合箇所には通常2個以上のだぼ穴を開けますが、
接合する両部材の穴の位置を正確に開ける必要があります。
正確でないと、接合したとき隙間ができたり、十分な強度を
得ることができません。
無垢板の場合は、木目が有りますので、一般の木工用の
キリでだぼ穴を開ける際は、センターがどうしても木目に
影響され、位置がズレたり、キリが斜めに入ったりします。
そのため、だぼ穴を開ける場合は、センターの付いていない
だぼ穴専用のキリを使用します。
パーティクルボードやファイバーボードのような木目に
影響されにくい部材同士の接合の場合は一般の木工用キリ
でも上手く出来ます。
「だぼつぎ」は、接合材料に穴を開けるスペースが確保
できれば、お互いの材料の形状には影響されないつなぎ方
なのが利点です。
「だぼつぎ」の場合のだぼの径、長さ、材料の厚みの関係は、
およそ以下の図のようになるのが一般的と言われています。
P =(1/2~2/5)×T
L =(3~4)×P
「だぼつぎ」に使用される「だぼ」は、一般的によく木工で
使われているのは、直径が8mm前後、長さが30mm前後
のものです。
下記の写真のように表面にらせん状に圧縮ミゾが付けられて
おり、接着剤のまわりをよくしています。
「だぼ」の材料としてはブナ材が多く使われています。
「だぼつぎ」の加工においては、仮に8mmの径の「だぼ」
を使用する場合は、だぼ穴の径は7.9~7.8mmとします。
「だぼ」の径より若干小さくします。
このことによってお互いの材料の結合が強くなりますので、
専用のキリが必要になります。
また、接着剤に含んでいる水分によって「だぼ」が水分を
吸収し膨張しますので、さらに結合力が大きくなります。
したがって「だぼ」に接着剤を塗布したらただちに
差し込んで固定してください。
接着剤を付けたままで永く放置してしまうと、
「だぼ」が膨れて入らなくなってしまいます。
三枚つぎ
「三枚つぎ」はお互いの材料の厚みの部分の1/3づつを
ほぞとみぞに加工して、差し込んで留めるつなぎ方で、
各種の枠組みなどに使われる接合方法です。
「三枚つぎ」には以下のようなものがあります。
留形三枚組みつぎ
隠し留形三枚組みつぎ
留蟻形三枚組みつぎ
隠し留蟻形三枚組みつぎ
包み蟻形三枚組みつぎ
留つぎ
「留つぎ(とめつぎ)」とは、枠組みや箱組みの加工を行う
場合に、それぞれの材料の木口を45度にカットして
組み合わせ、木口を見えないようにする接合方法です。
上記の三枚組みつぎで述べた留形も留つぎですが、
もう少し簡単な留つぎの方法をご紹介します。
「留つぎ」は木口が見えないように美観が必要となる額縁や
箱などの接合に使用されますが、接合には「ちぎり」、
「雇いざね」、「筋交い」を使用します。
「留つぎ」には以下のような継ぎ方があります。
平留つぎ
雇いざね留つぎ
ひき込みつぎ 蟻形ちぎり留つぎ
筋交い入れ留つぎ だぼ留つぎ
留形ほぞつぎ
ここからは主に板材同士の接合方法についてご紹介したいと思います。
板材どうしの接合方法には、両方の板材を直交させて
つなぎ合わせる、
① 平打ち付けつぎ
② 大入れつぎ(追入れつぎ)
③ 組みつぎ
が有ります。
また、広い巾の板材を作る方法に
④ 巾はぎ
が有ります。
平打ち付けつぎ
平打ち付けつぎは双方の木口を直角に加工し、
これをもう一方の板に突き合わせ、釘と接着剤を併用して
接合します。
強さや外観は劣りますが、加工が簡単なので、箱組みや机の
引き出し組みなどに用いられますが、最近は木ネジを使用
することが多く強度も増します。
外観を良くするためには、だぼ穴を開け、釘打ちの後ダボを
打ち込み釘の頭を隠すようにすればきれいに仕上げることが出来ます。
種類としては、打ち付けつぎ、包み打ち付けつぎ、
留形包み打ち付けつぎ、が有ります。
包み打ち付けつぎ 留形包み打ち付けつぎ
この方法での釘付けの保持力を高めるには、
釘の長さは板厚の3倍前後、
交互に約70°前後の角度をつけて打ち込むようにします。
このような釘の打ち方をすれば強度が増します。
大入れつぎ
大入(おおいれ)つぎ、又は追入(おいいれ)つぎと呼ばれ、
一方の板の側面にミゾを掘り、もう片方の板の木口を側面に
差し込んで接合する方法です。
大入れつぎには、差込む材料の厚みのミゾを側面の端から
端まで全部に貫通させた大入れつぎ。
ミゾの両端を貫通させずに途中で止めた肩欠き大入れつぎ。
箱組み等によく使われる差し込む材料の厚みの半分を
欠き取る片胴付き大入れつぎ。
ホゾが抜けないようにミゾの奥が広がった蟻形大入れつぎ 、
などの接合方法があります。
蟻形大入れつぎの接合方法は、天板の反り防止の加工方法
として使われる吸い付き桟を天板に取り付ける場合にも
使われる接合方法です。
ミゾの深さは厚みの1/3程度とし、あまりきつすぎない
ように加工し、天板に取り付ける吸い付き桟の場合は、
接着剤は使用しません。
「大入れつぎ」を図示したのが以下となります。
大入れつぎ 肩欠き大入れつぎ
片胴付き大入れつぎ 蟻形大入れつぎ
組みつぎ
組みつぎは、両方の材料の木口の接合部に凹凸の組み手を
加工し接合するもので、このつなぎ方が綺麗に出来るように
なれば、外観上美しく強度もあります。
引き出し、箱等の組み手等に使われ、木工が好きな方なら
一度は挑戦してみたい接合方法です。
2枚組みつぎ以外は全て組み手が奇数枚になるように
割り付け加工します。
「組みつぎ」には、
2枚組みつぎ、5枚組みつぎ、刻み組みつぎ、
蟻組みつぎ、包み蟻組みつぎ、隠し蟻組みつぎ、
留め形隠し蟻組みつぎ
等があります。
2枚組みつぎ 5枚組みつぎ
刻み組みつぎ 蟻組みつぎ
包み蟻組みつぎ
隠し蟻組みつぎ
留め形隠し蟻組みつぎ
巾はぎ
「巾はぎ」とは、狭い巾の板を数枚貼りあわせて巾の広い板
にする加工方法のことです。
板の側面(木端)と側面を削り、この板を数枚貼り合せ、
巾の広い大きな1枚の板にする接合方法です。
特に巾の広い板が必要なテーブルやカウンター等の天板を
製作するのに使われる接合方法です。
貼りあわせの方法には次のような種類があります。
すり合わせはぎ(芋はぎ、平はぎ)、相欠きはぎ、
雇いざねはぎ、本ざねはぎ、蟻ざねはぎ、相互はぎ、
傾斜はぎ、だぼはぎ、木ねじはぎ、蟻くさびはぎ、
端ばめはぎ、ビスケットジョイント、フィンガージョイント
などがあります。
すり合わせはぎ 相欠きはぎ
雇いざねはぎ 本ざねはぎ
蟻ざねはぎ 相互はぎ
傾斜はぎ だぼはぎ
木ネジはぎ 蟻くさびはぎ
端ばめはぎ
上記が巾はぎの主な接合方法ですが、現在専門の工場等で
行われている方法にビスケットジョイントという接合方法があります。
この方法は上記の「すり合わせはぎ」と「雇いざねはぎ」を
組み合わせたような方法です。
雇いざねの代わりに平たい楕円形をしたビスケットのような
形をしたものを数ヶ所に入れています。
この方法ですと、外からはビスケットを見せずに強固に
接着させることができますので、多くの専門メーカーでは
この接合方法が行われています。
フィンガージョイントというのは、集成材の製作において
長さ方向のジョイントに使われている接合方法です。
お互いの接合面をギザギザの凹凸に加工して接合するもの
ですが、巾はぎにも同じような方法で接合したものがあります。
まとめ
以上が木材同士の接合に使われる主な接合方法になります。
実際の接合強度と見た目にキレイに加工するには、
ある程度の練習とそれなりの道具や工具が必要になりますが、
簡単なものから挑戦してみてください。
ただ十分な技術が伴わない内は、加工精度が悪くなり、
かえって接合強度に問題が生じてしまいます。
こんな時は、迷わず接合金物を使用するのもひとつの方法です。
強度も確保出来、見た目もきれいに仕上げることが可能です。
接合金物につきましては下記にまとめてありますので、
こちらもチェックしてみて下さい。
木製テーブルの作り方と接合方法はこちら
木製椅子の作り方と接合方法はこちら
木工用木材、道具、工具はこちらから
ありがとうございました。
大変勉強になります。
2×4同士を38mmの面でT字型(90度回転して「ト」)に継ごうとしています。水平部分は400mmほど出っ張り、そこへ5kgほどの荷重がかかります。T形相欠きつぎにすると19mmに欠くことになり、その部分が1×4になってしまう感じですが、強度は問題ないでしょうか?
ご回答いただければ幸いです。
こんにちは、りょうさん。
お問い合わせを頂きまして有難うございます。
構造力学的なことは、専門外ですので
よく分かりませんが、
接合部に接着剤を付け、木ネジを4~5本打てば
感覚的には大丈夫と思います。
よろしくお願いいたします。
山根様
大丈夫そうで安心しました。
念のためブラケットで補強しようかと思います。
ありがとうございました。
TSUGITE PROJECTSで見ましたが、角材を使った3方向継手の加工及び組み方を教えて下さい。
こんにちは、徳永秀樹 様。
お問い合わせをいただきまして有難うございます。
3方向とは、どのような3方向でしょうか?
具体的に図に書いて送ってみてください。
宜しくお願い致します。
山根