シャッターは、レンズを通ってきた被写体の光を撮像素子に当てたり、遮断したりするシステムのことです。
シャッターは、写真の仕上がりの基本要素である露出を決める重要な要素でもあります。
シャッタースピードを変えることによって写り方が変わります。
特に動きのある被写体を写す場合は、高速シャッターで写すか低速シャッターで写すかによって、出来上がった写真のイメージが大きく変わります。
このページでは、シャッタースピードを設定する上での目安と、シヤッタースピードを変えることによってどの様に写り方が変わるのかをご紹介します。
シャッターとは
シャッターは、レンズを通して入ってくる被写体の光を撮像素子に当てたり、遮断したりする機構のことで、カメラの基本要素である露出を決定する重要なシステムの一つです。
写真の出来上がりは露出によって決定されます。
露出とは、撮像素子に当てる光の量のことをいい、多く当てるか少なく当てるかによって写り方が変わってきます。
露出を決める要素は「シャッター」と「絞り」と「ISO感度」です。
露出の調整は、光が入ってくる窓の大きさの調整と時間の調整、そして光に対する感度によって行います。
窓の調整にあたるのが絞りであり、時間の調整にあたるのがシャッタースピードです。
光を感じ方を変えるのがISO感度です。
つまり露出は、シャッタースピードと絞りとISO感度の3つの要素で決められています。
シャッタースピードとは
シャッタースピードとは、シャッターが動く速さのことではなく、シャッターが開いている時間、もっと正確に表現すると撮像素子に光が当たっている時間のことを言います。
高速シャッターと低速シャッター
シャッタースピードの速さに厳密な区分はありませんが、シャッターが開いている時間が短いものを高速シャッターとかハイスピードシャッターと呼びます。
逆にシャッターが開いている時間が長いものを低速シャッターとかロングタイムシャッターと呼んでいます。
私の持っているEOS 5D のシャッタースピードは、最高速の1/8000秒からバルブまであります。
通常の撮影においては、1/1000~1/125秒あたりのスピードが多いと思いますが、これより速ければ高速、遅ければ低速かなと思います。
仮に絞りを一定とすると、高速シャッターの場合はシャッターが開いている時間が短いので光の量は少なくなり、撮像素子に当たる光の量も少なくなります。
低速シャッターの場合は、シャッターが開いている時間が長いので光の量は多くなり、撮像素子に当たる光の量も多くなります。
シャッタースピードの範囲
シャッタースピードの範囲は、カメラやシャッター機構によって変わってきます。
デジタル一眼レフ canon EOS 5D markⅢ の場合は、以下のようなシャッタースピードが選択できます。
1/8000 , 1/6400 , 1/5000 , 1/4000 , 1/3200 , 1/2500 , 1/2000 , 1/1600 , 1/1250 , 1/1000 , 1/800 , 1/640 , 1/500 , 1/400 , 1/320 , 1/250 , 1/200 , 1/160 , 1/125 , 1/100 , 1/80 , 1/60 , 1/50 , 1/40,1/30 , 1/25 , 1/20 , 1/15 , 1/13 , 1/10 , 1/8 , 1/6 , 1/5 , 1/4 , 0.3 , 0.4 , 0.5 , 0.6 , 0.8 , 1 , 1.3 , 1.6 , 2 , 2.5 , 3.2 , 4 , 5 , 6 , 8 , 10 , 13 , 15 , 20 , 25 , 30 , バル
カメラで選択出来る最高速度は、1/8000秒で、最も遅いのが30秒となっています。
以前のフィルム式カメラに比べて、かなり細かく設定出来るようになっています。
バルブは星空や花火などの撮影で、長時間の露出が自由に決めて撮影出来るようになっています。
コンパクトデジタルカメラ canon SX700 HS の場合は以下のようになっています。
1/3200 , 1/2500 , 1/2000 , 1/1600 , 1/1250 , 1/1000 , 1/800 , 1/640 , 1/500 , 1/400 , 1/320 , 1/250 , 1/200 , 1/160 , 1/125 , 1/100 , 1/80 , 1/60 , 1/50 , 1/50 , 1/40 , 1/30 , 1/25 , 1/20 , 1/15 , 1/13 , 1/10 , 1/8 , 1/6 , 1/5 , 1/4 , 0.3 , 0.4 , 0.5 , 0.6 , 0.8 , 1 , 1.3 , 1.6 , 2 , 2.5 , 3.2 , 4 , 5 , 6 , 8 , 10 , 13 , 15
カメラで選択出来る最高速度は、1/3200秒で、最も遅いのが15秒となっており、バルブ撮影機能はありません。
私のコンパクトデジタルカメラにはバルブ機能が付いていませんが、付いているカメラも多くあります。
一般的には、コンパクトデジタルよりも一眼レフの方が、より高速のシャッタースピードが得られるようになっています。
これは、元々のシャッター機構が異なっており、一眼レフカメラが有しているフォーカルプレンシャッターが高速シャッターを可能にしているためです。
シャッターの種類
カメラの種類によってシャッターの種類も異なっています。
シャッターの種類には、メカニカルシャッターと電子シャッターの2種類があります。
メカニカルシャッターの主なものとしてフォーカルプレンシャッターとレンズシャッターの2つの方式があります。
フォーカルプレンシャッター
レンズ交換式の一眼レフカメラに多く採用されているシャッター機構で、フィルム又は撮像素子の直前に配置されています。

フォーカルプレンシャッターは、レンズとは離れた位置に配置されていますので、レンズ交換式の一眼レフカメラに採用されています。
フォーカルプレンシャッターは、超高速に動作するシャッタースピードに対応するために考え出された方法で、数枚に分割した2群の遮光板を高速で移動することによって実現しました。
フォーカルプレンシャッターの機構
上記でも書きましたが、フォーカルプレンシャッターは数枚に分割した2群の遮光板を移動させることによってシャッタースピードを調節しています。
シャッターが全開出来るのは、1/250秒から1/125秒程度の遅いスピードの時で、これより速いスピードの場合は全開しません。
全開していたのでは、高速シャッターを作り出すことは出来ません。
そこで考え出されたのが、2群の遮光板でスリット(すき間)を作り、このすき間を移動させることによってフィルムや撮像素子に光を当てます。
スリットの幅を狭くし、超高速で移動させることによって1/8000秒という高速シャッターを作り出すことが可能となりました。
レンズシャッター
レンズシャッターは、レンズ固定式のコンパクトカメラに使用されていますが、レンズの中に配置されています。

レンズシャッターは絞り機構の近くに配置されますが、コスト面で絞りと共用しているタイプのものが多くなっています。
電子シャッター
電子シャッターはフィルム式カメラでは出来ない、デジタルカメラならではのシャッター方式となります。
CCDやCMOSといった撮像素子は、撮像素子に当てられた光を電気信号に変換しています。
変換の過程で発生した電荷の量を調節することによって当てられた光の量を調節しようというのが電子シャターです。
電子シャッターは、メカニカルシャッターのような物理的な遮光版は必要ありませんので構造が簡単なのが特徴です。
また物理的にシャッターを開閉するのではないので、高速シャッターが得やすいのも特徴で、1/32000秒のシャッタースピードを持つデジカメもあります。
シャッタースピードとブレの関係
シャッターが開いている時に被写体が動いたように写ることをブレと言います。
このブレとシャッタースピードとの関係についてお話しします。
ブレには、手ブレ、被写体ブレ、カメラブレの3つがあります。
手ブレ
手ブレは、シャッターが開いている間に手が動くことによって生じます。
手が動く原因としては、一つにはカメラの構え方があります。
カメラを構える時の基本的な構え方としては、脇をしっかりと絞め、ファインダーを顔に付けて両手でしっかり支えるようにします。
もう一つの原因としては、シャッターボタンを押すときにボタンだけではなく、カメラも同時に押してしまうために起こります。
したがって手持ち撮影の場合は、ある程度は抑えられますが、小さな手ブレはどうしても起こってしまいます。
手ブレと焦点距離との関係
手持ち撮影の場合の手ブレは完全には抑えられませんが、使用している撮影レンズの焦点距離によって、手ブレが目立つ場合と目立たない場合があります。
目立つか目立たないかは、画面内でのブレの移動量によって決まってきます。
望遠レンズの場合は焦点距離が長くなり、したがって画角も狭くなり写す範囲も狭くなります。
これに対して広角レンズの場合は、焦点距離が短く画角が広くなり写す範囲も広くなります。
したがって同じ手ブレの量の場合、望遠レンズは画面内に対するブレ量が大きくなりますので手ブレが目立ちます。
広角レンズは画面内に対するブレ量が小さくなりますので、手ブレは目立たなくなります。
手ブレに関しては個人差がありますので一概には言えないのですが、フルサイズのカメラの場合、1/焦点距離 秒が一つの手ブレが目立つか目立たないかのシャッタースピードの目安とされています。
たとえば焦点距離が200mmの望遠レンズを使用して手持ち撮影をする場合は、手ブレが目立つか目立たないかの目安のシャッタースピードは、1/200秒となります。
したがって手ブレを目立たないようにするには、1/200秒より速いシャッタースピードで写すのが良いとされています。
手ブレを目立たなくする撮影方法
手ブレを目立たなくする撮影方法をまとめると次のようになります。
① 正しい構え方。
まずは手ブレをなるべく起さないようにすることが大事です。
そのためには、両手でしっかりとカメラを支えて、脇を締めて背筋を伸ばして無理のない姿勢で写します。
② シャッターボタンの押し方。
シャッターボタンは早く押すのではなく、ゆっくりと静かに押します。
早く押してしまうとどうしてもボタンだけではなく、カメラも一緒に押してしまい、カメラが動いてしまいます。
シャッターボタンを押したときのカメラの動きを防ぐ方法として、セルフタイマーを使う方法があります。
セルフタイマーには、集合写真などで撮影者自身も写す場合に使われる10秒後にシャッターが切れるものと、最近のカメラでは2秒後にシヤッターが切れるものがあります。
セルフタイマー2秒の場合は、シャッターボタンを押して2秒後にシャッターが切れますので、シャッターボタンを押したときのカメラを動きを回避することが出来ます。
③ シャッタースピードを速くする。
シャッタースピードを速くすれば、ブレ量が小さくなりますので、手ブレは目立たなくなります。
シャッタースピードを速くするには、撮影モードをシャッタースピード優先にして高速シャッターに設定する方法、ISO感度を高く設定する方法などがあります。
また撮影モードをスポーツモードにして撮影するのも有効です。
スポーツモードにすると自動的に高速シャッターで写せるような設定となります。
④ フラッシュを使用する。
フラッシュ(ストロボ、スピードライト)は、瞬間的に光を発して被写体を写しますので手ブレや被写体ブレを抑えることが出来ます。
被写体ブレ
被写体ブレは、シャッターが開いている時に被写体が動くことによって生じます。
意図しない被写体ブレは失敗写真ですが、動いている被写体を写す場合は、露出の方法によっていろいろな写し方が出来ます。
露出の方法による写し方については、この後で詳しくご紹介します。
意図しない被写体ブレを無くすには、被写体に動かないでもらう他に、シャッタースピードを速くしたり、フラッシュを使用することによって抑えることが出来ます。
人物を撮影した場合に生じるブレには、手ブレによるものと被写体ブレによるものがあります。
背景にある静止物は静止して写っているのに人物だけがブレている場合が被写体ブレで、人物も含めて画面全体が同じようにブレているのが手ブレになります。
カメラブレ
三脚を使って静止した風景などを撮影してもブレが生じる場合があります。
これは、カメラ自体がシャッターを切る瞬間に動くことによって生じます。
ただしこのカメラ自体の動きは、非常に小さなものですので通常の撮影においては、あまり気にする必要はありません。
このカメラ自体の動きは、一眼レフカメラの場合に生じます。
一眼レフカメラには、ミラーが内蔵されており、シャッター幕が開くと同時にミラーが跳ね上がり撮像素子に光が当たる仕組みになっています。
ミラーとシャッター幕は高速で動いたり止まったりしていますので、この動きがカメラを振動させる原因となります。
したがってミラーとシャッター幕には、カメラを振動させないような工夫がされていますが、完全に振動を無くすことは出来ないようです。
この振動をなくす方法として、ミラーアップ撮影という方法があります。
全ての一眼レフカメラに付いている機能ではありませんが、シャッターを切る前に予めミラーを跳ね上げておき、シャッターを切って写します。
こうすることによって、ミラーが跳ね上がるときに生じる振動を回避することが出来ます。
機械的に動くフォーカルプレーンシャッターはどうすることも出来ませんが、電子シャッターでしたら振動は起きません。
シャッタースピードによる写り方の違い
シャッタースピードによる写り方の違いは、特に動いているものを撮影した場合に顕著に現れます。
私は山が好き(海も好きですが)で行くことが多いのですが、滝を撮影する場合はシャッタースピードによって写り方が変わってきます。
高速シャッターで撮影すれば、滝の水が止まったように写りますが、低速シャッターで写すと水が糸を引いたように写ります。
その他には、鉄道写真、アスリートの写真等々、シッヤタースピードの違いによって動きの捉えかたが変わってきますので大変興味のある写真が撮れます。
また、バルブ撮影による長時間露出撮影で、打ち上がってから消えるまでの花火の写真や、夜空に光る星空を長時間撮影することによって星の動きを撮影することも出来ます。
写真は「見たままが写る」と言われることがありますが、間違いではありませんが、写真は、人の目には見えない世界を写しだすことが出来るのです。
ここからは、シャッタースピードの違いによる写り方の変化についてご紹介します。
シャッタースピードの設定方法
シャッタースピードを設定するには、まず最初に撮影モードを設定します。
撮影モードとは、露出の決め方のことですが、基本的に以下の4つの撮影モードがあります。
プログラムAE、絞り優先AE、シャッタースピード優先AE、マニュアル露出、の4つです。
上記の内で撮影者の意図によって決められるのは、絞り優先AE、シャッタースピード優先AE、マニュアル露出 の3つとなります。
初心者の方の場合は、まずシャッタースピード優先AEから始められると良いでしょう。
露出のことがよく理解できたら絞り優先AEやマニュアル露出にも挑戦してください。
シャッタースピード優先AEでの露出の決め方は、シャッタースピードを撮影者が決めて、絞りについては、適正露出になるようにカメラが自動で決めてくれます。
また露出を決めるもう一つの要素となるISO感度については、AUTO にしておくと失敗がないので良いでしょう。
まずは撮影モードをシャッタースピード優先AE、ISO感度をAUTO にして撮影して、シャッタースピードの違いによる写り方の変化を理解してください。
露出については、後の方で詳しくご紹介します。
シャッタースピードの違いによる写り方の変化の例
それではシャッタースピードの違いによって、どのように写り方が変わるのかを実際の写真を見てみましょう。


上記の2枚の写真はいずれも高速シャッターで写されたものです。
水が跳ね上がった様子のある瞬間を捉えたものですが、撮像素子に当たっている光の時間が非常に短いので一瞬の水玉が写し出されています。


上記の2枚の写真は、低速シャッターで写されたものです。
シャッターが開いている時間が長いので、開いている間に流れた水の粒が筋となって写し出されています。

上記の写真は、走る電車を低速シャッターで写されたものです。
低速シャッターにすることによって被写体が流れますので、動きを表現することが出来ます。

上記の写真も低速シャッターで、走る車内の先頭から写されたものです。
画面を流すことによって、ダイナミックなスピード感が表現されています。

上記は運動会の一コマのようですが、がんばるお父さんの面白い一瞬が写し出されています。
高速シャッターならではの1枚ですね。

高速シャッターで写された風車。


上記2枚は低速シャッターで風車の羽根が回る様子が表現されています。
低速シャッターを使って撮影する被写体としてよく撮られるのが花火です。
花火を写す場合は、オートでも撮れますが、一般的にはバルブ撮影という方法で写します。
バルブ撮影というのは、シャッターボタンを押している間はシャッターが開いた状態となります。
花火がポーンと打ちあがって、ドーンと開いて、消えるまでの間をお好みのタイミングで写すことが出来ます。


上記のような花火を写す場合の基本的な方法は以下のようになります。
まず長時間露光となりますので、手ブレを防ぐために三脚を使用します。
また直接シャッターボタンを押すと、カメラが動くので、ケーブルレリーズを使用します。
絞りの目安は、F9~F18 くらいまででお持ちのカメラで設定できる範囲内で良いでしょう。
いずれにしても、かなり絞りぎみにします。
このほうが花火全体にピントが合いますので、花火全体がきれいにシャープに写ります。
ホワイトバランスは、オート又は太陽光、白熱電球でも良いです。
ISO感度は100にします。
ピント調節は、最初の数発はオートフォーカスにして写し、一番良いと思われるピントでマニュアルフォーカスに切り換えて、その後は写すと良いでしょう。
オートフォーカスのままにしておくと、その都度ピントが変わり、素早くピントが合いにくくなります。

夜空に輝く星空もスローシャッターの被写体としてよく撮られています。
星の光は弱いので、スローシャッターにしてISO感度も高めにして写します。
星空の撮影も状況によっていろいろありますが、およその設定の目安としては下記となります。
シャッタースピード : 10~30秒
絞り : F1.4~F2.8
ISO感度 : 800~4,000
上記の数値を一応の目安として、状況に合わせて変更していってみて下さい。
絞りについては、お持ちのカメラの開放絞り値で設定するとよいでしょう。
ISO感度については、最近のデジタルカメラは高感度でもノイズが抑えられるようになっていますが、状況判断で上げすぎには気を付けてください。
ピント合わせについては、出来る限り厳密に行ってください。
ファインダーですと分かりにくいと思いますので、ライブビューを使って、どれか一つ分かりやすい星を見つけて、拡大表示させてマニュアルで合わせます。

上記の写真は2017年の夏に黒部に行ったときに写したものですが、初めてインターバル撮影という機能を使って写したものです。
インターバル撮影というのは、ある一定の間隔で長時間撮影して全ての画像を合成して作られます。
この場合も星の明かりは暗いので、シャッタースピードは遅くなります。
シャッタースピードの違いによる写り方の変化をご紹介しましたが、高速シャッターを使えば、動きを止めて被写体の一瞬の様子を写すことが出来ますが低速シャッターで写せば、動きのある表現方法となります。
あなたが表現したいと思うことをイメージして、シャッタースピードを使い分けてください。
露出の基本
カメラによって写される写真の出来上がりは、露出(当てられた光の量)によって決まってきます。
露出を決めるのは、ご紹介してきたシャッタースピードの他にもう2つありますが、絞りとISO感度になります。
ある被写体を写す場合に適正な露出がある場合、露出を決定するシャッタースピード、
絞り、ISO感度の内のどれか一つを変えると、適正露出にするには他の2つの数値も変える必要が生じてきます。
すなわちシャッタースピード、絞り、ISO感度 の3つはお互いに関連しています。
シャッタースピードを変えたい場合は、ただ単にシャッタースピードを変えれば良いというものではありません。
絞り、ISO感度も変えてやらなければ希望するシャッタースピードが得られませんし、適正露出も得られません。
ここからは適正露出を得るためのシャッタースピード、絞り、ISO感度 の関係についてご紹介します。
シャッタースピードと露出
まずシャッタースピードについて、よく使われるものについて見てみます。
1/125秒 、 1/250秒 、 1/500秒
絞りとISO感度を固定しているとすると、1/125秒のシャッタースピードを1/250秒にすると速度が2倍となりますので、光の量は逆に1/2となります。
1/500秒にするとさらに光の量は半分となり、1/125秒のときと比べると1/4となります。
隣り合うシャッタースピードは全て上記の関係にあり、一つシャッタースピードをあげると光量は半分になり、一つシャッタースピードを落とすと光量は2倍となります。
絞りと露出
次に絞りと露出について、以下の隣り合う3つの絞り値を見てみます。
F4 、F5.6 、F8
シャッタースピードとISO感度を固定しているとすると、絞りをF4からF5.6にした場合、絞りを一つ絞ると、光量は半分となります。
F8からF5.6に一つ絞りを開けると、光量は2倍となります。
絞り値の数値は不規則な数字のようになっていますが、隣り合う絞り値は全て倍半分の関係になります。
ISO感度と露出
ISO感度とは、撮像素子が光を感じる感度のことです。
基本的なISO感度は100ですが、最近のデジタルカメラは高感度化しており、かなり高い数値のISO感度が使えるようになっています。
ISO感度は100、200、400と高くなっていきますが、これもシャッタースピードや絞りと同様で、隣り合うISO感度は倍半分の関係にあります。
100から200に上げると、感度は2倍となり、2倍の光の量を受けたことになります。
シャッタースピードと絞りは、レンズを通って入ってくる光を物理的にさえぎって光の量を調節しますが、ISO感度は違います。
ISO感度の場合は、入ってくる光の量は一定でも、感じ方によって光の量を調節しようというものです。
余談になりますが、ISO感度の「ISO」は、International Organization for Standardization
(国際標準化機構)の略で、さまざまな国際規格を策定している団体を表しています。
「ISO感度」は、国際規格の基に作られた製品の感度ということになります。
したがって国内をはじめ世界中のメーカーによって作られた撮像素子のISO感度は全て同じ規格に基づいて作られていますので、同じものになります。
ISOの規格は、ISOに5桁以内の数字を付けて表していますが、皆さんよくご存じの
品質マネジメントシステムの国際規格はISO9000、環境マネジメントシステムの国際規格はISO14000 となっています。
ISO感度に関する国際規格は、ISO5800 で定められています。
露出値
ISO感度は一定として、シャッタースピードと絞りの関係についてご紹介します。
シャッタースピードと絞りによって得られた露出を数値化したものを露出値と呼びますが、この露出値は、「EV」とういう単位で表します。
シャッタースピードが1秒で、絞り値が1のときに得られる露出値を「EV0」としており、この値を基準にしてEV値が決められています。
シャッタースピードは1秒のままで、絞りを一つ絞って1.4にした場合が、EV1となります。
逆に絞りは1のままで、シャッタースピードを一つ上げて1/2にした場合もEV1となります。
このように絞りを一つ絞るごとに、EV値がひとつ大きな数値となり、同じようにシャッタースピードが一つ速くなるごとにEV値がひとつ大きな数値となります。
この関係をグラフにしたのが下記の図になります。

横軸がシャッタースピードで、右に行くほど速くなります。
縦軸がF値で、上に行くほどF値が大きくなり絞った状態となります。
右下がりの斜めの線が、同じEV値を結んだ線となります。
上のグラフを見て頂いてお分かりのように、同じ露出値(EV値)となるシャッタースピードと絞りの組み合わせは一つではなく、沢山あることになります。
たとえば、ちょうど真ん中のEV10の斜めの右下がりの線を見ると、F8のときのシャッタースピードは1/15で、F2.8のときのシャッタースピードは1/125となります。
どちらも露出値(EV値)は同じということになります。
現在のEV値がEV10の場合、EV9にすることを1EV明るくすることを意味し、EV11にすることを1EV暗くすることを意味します。
そしてその場合のシャッタースピードと絞りの組み合わせも沢山あることになります。
また「EV」の代わりに「段」という言葉を使うことがあります。
「EV」と「段」は同じ意味で使われています。
「1EV明るく」と「1段明るく」は同じ意味で、「1EV暗く」と「1段暗く」も同じ意味となります。
ISO感度とシャッタースピードとの関係も、ISO感度と絞りの関係も同じこととなります。
絞りを一定とすれば、シャッタースピードを1段速くすれば、同じEV値にするためにはISO感度を一つ上げれば良いことになります。
シャッタースピードを1段遅くすれば同じEV値にするためには、ISO感度を一つ下げれば良いことになります。
シャッタースピードが一定の場合も同様で、絞りを絞った分ISO感度を上げれば同じEV値になりますし、絞りを開ければ開けた分ISO感度を下げれば、おなじEV値になります。
シャッタースピードの上げ方
基本的な露出のことがご理解いただけたと思いますので、シャッタースピードの上げ方についてご紹介します。
一般的な晴れた屋外での撮影では、ISO感度の目安は、100しておけば、露出の調整はシャッタースピードと絞りで行うことが出来ます。
問題は、少し薄暗い室内や太陽が沈みかけて薄暗くなってきた屋外などでの撮影の場合に、三脚があれば良いのですが、手持ち撮影する際にシャッタースピードと絞りだけの調整では無理が生じる場合があります。
絞りを開放絞りまでいっぱいに開けても、手ブレを起さないシャッタースピードまで上がらない場合があります。
また三脚を使っても被写体が静止したものでなければ、被写体ブレが生じてしまいます。
このような場合は、どうしてもシャッタースピードを手ブレが生じないくらいまで上げてやる必要があります。
このときに有効に使えるのがISO感度です。
ISO感度を一段階上げてやれば、それまでよりも光の量が2倍になることと同じことですので同じEV値にするには、シャッタースピードを2倍速くすることが出来ます。
ISO感度を二段階上げてやれば、シャッタースピードは4倍速くすることが出来ます。
手ブレを起させないところまでシャッタースピードが上がったらシャッターを切りましょう。
ISO感度を上げる場合に注意することとして、感度を上げることによって同時にノイズも増幅させてしまうということです。
ノイズが増幅されることによって、画質の低下が生じてきます。
カメラによってISO感度の設定範囲が決まっていますし、ノイズの生じ方等についても説明書きがあると思いますので、確認しておかれると良いでしょう。
しかし最近のデジタルカメラはメーカーさんの技術力の向上によって、かなりの高感度までノイズが目立たなくなっています。
プロの方は別として、一般の私たちが見ても分からないくらいになっています。
ブレブレの失敗写真を撮るよりも、ISO感度を上げてシャープなきれいな写真を撮りましょう。
慣れないうちは、ISO感度はAUTOにして写されることをおすすめします。
カメラが適切なISO感度を決めてくれますので、失敗がありません。
絞りと写り方の関係
シャッタースピードと写り方の関係は、これまでご紹介してきましたのでお分かりいただけたと思います。
ここでは絞りと写り方の変化についてご紹介します。
絞りを絞ると(数値を大きくする)被写界深度が深くなります。
したがって、画面内の手前から奥までがピントが合っているようにシャープに写ります。
逆に絞りを開ける(数値を小さくする)と被写界深度が浅くなり、ピントが合っている被写体の前後の背景がボケて写ります。
被写界深度についての詳しい内容は下記をご覧ください。

マニュアルモード撮影
最初にデジタルカメラを手にすると、まずは全自動(プログラムAE)で、全てをカメラに決めてもらって写すことから入ります。
次に絞り優先AEで、花などのマクロ撮影でボケの表現の仕方などを学びます。
そして次にシャッタースピード優先AEで動きのある被写体に挑戦して動きの表現の面白さを学びます。
多くの方がおおよそこんな感じかなと思いますが、私の場合はこんな感じでした。
ここまで読んでいただいたあなたなら、次のマニュアルモード撮影も出来ます。
ぜひ失敗を気にせずどんどん撮ってみて下さい。
でもいきなり撮影現場に来て、「さあマニュアルモードで写してください」と言われて、全ての設定を自分で決めて、適正露出で写せる人はまずいないでしょう。
プロの方は分かりませんが。
私には出来ません。
いきなり初めての場所に来て、適正なシャッタースピード、絞り、ISO感度を決めるのはまず無理でしょう。
よほどの経験を積めば分かるようになるかもしれませんが、普通の方は無理ですよね。
マニュアルモードで写すといっても、いきなりマニュアルモードにするのではなく、まず最初は、全自動(プログラムAE)で写してみます。
その場合、シャッターボタンを半押ししたときに、その時の適正露出の数値がファインダー内や液晶画面に表示されます。
表示された数値が、カメラが考える適正露出となりますので、その数値をメモっておきます。
写された写真は特に何の問題もなくきれいな写真が撮れているはずです。
あなたが考えるのはここからです。
何の問題もなくきれいに撮れた写真をあなたがイメージする写真に変えていけば良いのです。
撮影モードを全自動(プログラムAE)からマニュアルモードに変え、先ほどメモった数値
で設定し、あなたがイメージする画像になるように数値を変えてやれば良いのです。
数値を変えることによる写り方の変化についてはもう分かっていますよね。
ISO感度の使い方
ISO感度とは先にもご紹介しましたが、撮像素子が光を感じる感度のことです。
したがって、入ってくる光の量が一定で変わらなくても、感度を変えることによって光の量を変えたことと同じことになります。
このことは、撮影の幅を広げる意味において大変重要なこととなります。
暗くても写せる。
ISO感度を究極まで高めたカメラが、高感度カメラとか暗視カメラとか呼ばれているものです。
皆さんも一度はテレビなどで見られたこともあるかと思いますが、暗闇の草原の中にいる野生の動物たちを、わずかな月や星の明かりでも写すことが出来ます。
私たちが通常使っているカメラはここまでは無理ですが、近い将来にはこのようなカメラが
気軽に持てるようになるかもしれません。
シャッタースピードが変えられる。
現実的に今使える使い方としては、シャッタースピードが変えられるということでしょうか。
薄暗い場面での手持ち撮影において、ISO感度を上げることによってシャッタースピードを上げることが出来ます。
初心者の方は慣れないうちは、ISO感度はAUTOにして写されることをおすすめします。
特に失敗が許されない一度きりのチャンスを写される場合などは、AUTOにしておくのが賢明でしょう。
AUTOにしておけば、カメラがノイズのない適切な設定値に自動で設定してくれます。
特に室内や屋外を頻繁に出入りしながら写す場合などは、その都度ISO感度を変えるのは面倒ですし、ついつい忘れがちになります。
特に薄暗い室内で撮影する場合は、ISO感度を100などの低い数値に設定したままにしていると、シャッタースピードが極端に遅くなり、手持ち撮影ではブレブレの写真となってしまいます。
たとえば大切なご家族やご友人の結婚式の写真を撮る場合などは、室内や室外での撮影がありますし、室内に置いてもムードを盛り上げるために照明が変わります。
このような場合は、設定自体も迷いますし、悩んでいる内にシャッターチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。
写り方を変えずに調整できる。
シャッタースピードと絞りは、変更することによって露出が変わると同時に、写真の写り方も変わってきます。
写り方を変えずに露出を変えたい場合に、ISO感度で調整することが出来ます。
たとえば噴水や滝の流れを止めて、ダイナミックに高速シャッターで写し、同時に背景や前景もシャープに写したい場合などは、高速シャッターに設定すると絞りは開けないといけなくなり、背景や前景がボケてシャープに写せません。
このような場合に、絞りは絞ったままに固定して、露出をISO感度で調整します。
そうすれば、高速シャッターで背景もシャープに思い通りの写真が写せます。
当然ながらこの場合は、マニュアルモードでの撮影になります。
被写体ブレを防ぐ。
ISO感度を上げることによって高速シャッターで写せますので、手ブレを防ぐことが出来ますが、同時に被写体ブレも防ぐことが可能です。
ワンちゃんやネコちゃんなどのペットを撮影する場合など、ワンちゃんが飛び跳ねた一瞬やネコちゃんの可愛い一瞬のしぐさを写すには高速シャッターで写さなくてはいけません。
このような撮影をされる場合は、迷わずISO感度を上げて写しましょう。
迷う場合はISO感度はAUTOでも良いです。
高速シャッターに見合う適切なISO感度でカメラが写してくれます。
まとめ
シャッタースピードを変えることによって目では見ることが出来ない世界を写し出すことが出来るようになります。
カメラの醍醐味の一つと言えるでしょう。
写真を写すときは、あなたの表現したいイメージを考えながら写してください。
そうすれば、カメラで写すことがもっと楽しくなるはずです。


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