デジタルカメラのフィルターの種類と使い方。
フィルターの使用目的は大きく次の2つがあります。
一つはレンズの前玉にキズ、汚れ、水滴等が付くのを防止したり、紫外線を除去したり、
レンズの保護を目的とするフィルターです。
二つ目は、フィルターを使用することによっていろいろな効果を与えることを目的とする
フィルターです。
フィルターの種類と使い方についてご紹介します。
この記事の目次
フィルターの種類
フィルターにはおおむね以下のような種類があります。
●プロテクトフィルター、スカイライトフィルター、UVフィルター
●PLフィルター、減光フィルター、クロスフィルター、ソフトフィルター
プロテクトフィルター、スカイライトフィルター、UVフィルターは、おおむね保護を
目的としたフィルターで、画質に与える影響が少ないフィルターとなります。
PLフィルター、減光フィルター、クロスフィルター、ソフトフィルターは、
それぞれ特殊な効果を目的としたフィルターとなります。
プロテクトフィルター
プロテクトフィルターは、レンズの前玉にキズ、汚れ、ホコリ等が付かないように保護を
目的としたフィルターです。
また撥水加工が施されたものもあり、水滴を簡単に拭き取ったり吹き飛ばしたりして
取り除くことが出来ます。
レンズはカメラの重要な部品の一つですので、プロテクトフィルターは常に装着しておく
のが良いでしょう。
レンズの光学性能に与える影響は少ないとのことなので、大切なレンズを保護する
ことの方が重要ですので、私は一眼レフやミラーレスの交換レンズを購入するときは
プロテクトフィルターもセットで購入しています。
現在は使用していませんが、スカイライトフィルターは薄いピンク色をしたフィルターで、
シャドー部が青みがかるのを抑えるフィルターです。
UVフィルターは、紫外線を除去するフィルターです。
PLフィルター
PLフィルターは、偏光フィルターとも呼ばれていますが、水やガラスなどに反射した
特定の振幅の光だけを減光することが出来るフィルターです。
PLフィルターは、レンズの全面に装着して使用しますが、フィルターの枠が
2重構造になっており、レンズに装着して固定した状態で前側の枠を回転させることによって
フィルター面を回転させることが出来るようになっています。
PLフィルターは、フィルター面を回転させながら減光の効果を確認しながら使用します。
PLフィルターの使用目的
①水面の反射光を減光したい。
②ガラス面の映り込みを消したい。
③植物の葉っぱなどの反射光を減光して鮮やかな色を出したい。
④青空の色を濃くしたい。
以上のような目的の場合に使用されます。
私の場合は、どちらかというと風景撮影が多いので、秋の紅葉や美しい花などの色を
鮮やかに出したい場合や水面の反射光を抑えたい場合、青空の色をもう少し濃く出したい
場合などに使っています。
PLフィルターは、スリット構造になった偏光膜を2枚のガラスで挟まれた構造になっており、
回転させることによって減光効果が強まったり弱くなったりします。
円偏光(C-PL)フィルター
最近のPLフィルターは、円偏光(C-PL)フィルターと呼ばれている(サーキュラーPL
とも呼ばれている)ものが主に使われています。
デジタルカメラの露出機構に使われているハーフミラーにも偏光機構が使われており、
PLフィルターの偏光効果と干渉しないように、円偏光(C-PL)フィルターには特殊な
フィルムが加えられています。
これから購入を検討されている場合は、円偏光(C-PL)フィルターがオススメです。
また、野外での風景撮影が多い場合は、撥水効果のあるものや汚れが付きにくい
タイプの円偏光(C-PL)フィルターが良いでしょう。
デジタルカメラ専用設計 Kenko PRO1 Digital C-PL 超薄型タイプ 77mm
上記は、Kenko の円偏光フィルターですが、超薄型タイプとなっています。
広角レンズに装着して使用する場合は、ケラレが生じる場合もありますので、
なるべく薄型を使用するようにしています。
PLフィルターの効果的な使い方
PLフィルターによる効果は常に同じということはなく、光の方向や被写体を写すときの
角度によって変わってきます。
ときには期待したほどの効果が得られない場合もあります。
青空を濃く撮影したい場合
青空を濃く撮影したい場合に最も効果が出るのは、真横から太陽を受けるように、
つまり横光での撮影が最も効果が出ます。
太陽を正面(逆光)や真後ろから受ける場合は効果が期待できません。
反射光を抑えたい場合
水面やガラスの反射光を取り除きたい場合は、水面やガラスの面に対して30~40°の
角度で写した時に最大の効果を得ることが出来ます。
正面からの撮影では効果が期待できません。
PLフィルター使用時の注意点
広角レンズにPLフィルターを装着して青空を撮影する場合は注意が必要です。
あまり効果を強くかけますと青空の色がムラになって写る場合があります。
空のグラデーションと捉える考え方も出来ますが、ちょっと不自然な感じがするので、
私は好きではありません。
下の写真は数年前の夏に上高地で撮った写真ですが、カメラはEOS 50D、
レンズはEF-S 10-22mmの広角レンズにPLフィルターを使用して写しました。
青空の左端の方は濃く、右にいく程薄くなっています。
実際の青空は、均一な色をしていましたが、広角レンズにPLフィルターの組み合わせ
の場合は、このように青空がムラになって写る場合がありますので注意が必要です。
一度試し撮りされるのが良いでしょう。
HAKUBA WPCワイド サーキュラーPL
HAKUBA の円偏光フィルターですが、汚れが付きにくい撥水タイプ、広角レンズ対応、
薄型となっています。
PLフィルターの保管方法
PLフィルターには偏光膜と呼ばれているものが使われていますが、この偏光膜は永久に
使えるものではなく、年月の経過とともに劣化していき、通常使用できる期間は
数年程度と言われています。
この劣化は、偏光膜が紫外線に弱いという性質によるものです。
したがって保管の際は、直射日光に当たらないように保管する必要があります。
またPLフィルターの枠は、二重構造となっており微妙な力で回転するように正確に
作られていますので、衝撃を与えて枠を少しでも変形させるとスムーズに回らなく
なってしまいますので取り扱いにも注意が必要です。
減光フィルター
減光フィルターはNDフィルター(Neutral Density filter)とも言われていますが、
文字通り光の量を減らすフィルターとなります。
被写体が明るすぎて、希望するシャッタースピードや絞り値が得られない場合に使用します。
減光フィルターは、光の量だけを調節するフィルターになり、画質特に被写体の
色の成分等については影響を与えることが非常に少ないフィルターとされています。
減光フィルターの使用場面
シャッタースピードを遅くしたい場合
一つ目の使用場面としては、減光フィルターを使用してシャッタースピードを遅くしたい
場面ですが、明るい日中の噴水や滝の水の流れを表現したい場合などに使用します。
通常スローシヤッターを得るためには、低感度にして絞り値を大きくして絞れば
スローシヤッターが得られますが、被写体が明るすぎる場合は、最小絞りでも期待する
スローシヤッターが得られない場合があります。
このような場合に減光フィルターを使用することによって期待するスローシヤッターが
得られます。
開放絞りを使いたい場合
二つ目の使用場面としては、ボケを得るために開放絞りを使いたい場合です。
被写体が明るすぎる場合などは、開放絞りにすると露出オーバーとなってしまい、
最高のシャッタースピードを使用しても開放絞りが使えない場合があります。
このような場合に、減光フィルターを使用することによって適正露出が得られ、
絞りを開放にして撮影することが可能となり、美しいボケを表現することが出来ます。
減光フィルターの種類
ケンコートキナー製のNDフィルターの場合ですが、ND2、ND4、ND8、ND16 ・・・と
数字が大きくなるにしたがって減光量も大きくなります。
高濃度NDフィルターと呼ばれるものには、ND500、ND1000、ND100000 などのような
極端に減光するものもあります。
ND100000は、光量を10万分の1に減光させるフィルターですが、太陽を撮影するのに
使用されています。
また、1つの減光フィルターで減光量を調節できるものもあります。
減光フィルターの使い方
通常の風景撮影等においては、ND2~ND16 くらいあれば十分かと思いますが、
ND2は光量を1/2、ND4は光量を1/4、ND8は光量を1/8、ND16は光量を1/16 に
それぞれ減光します。
撮影場面における光量は撮影時によってさまざまですので、複数枚揃えたいところですが、
全てを揃える必要はなく、減光量の大きいND8、又はND16を1枚購入して、あとは光量に
応じてISO感度で調節するのがオススメです。
例えば、ND16を購入した場合にND8として使用したい場合は、ISO感度を1段上げれば
ND8を使用した場合と同じシャッタースピードが得られます。
さらに1段上げてISO感度を2段上げれば、ND4を使用した場合と同じシャッタースピード
となります。
NDフィルターが複数枚あれば応用範囲は広くなります。
NDフィルターは2枚重ねて使用することが可能ですので、例えばND16を使用していて
もう少し光量を落したい場合などは、ND16の先にND2を重ねることによって1段分光量を
落すことが出来ます。
ただ、ケラレには注意する必要があります。
ハーフNDフィルター
通常のNDフィルターは、画面全体の光量を減らす場合に使用しますが、画面の一部だけ
減光したい場合があります。
例えば朝の水平線から上がってくる太陽を写す場合や、逆に山肌に沈む夕暮れ時などは、
水平線や山肌を境として大きく光量が違ってきます。
このような場合には、地上の明るさはそのままで、空の明るさだけを減光する
必要があります。
このようなときに便利なのがハーフNDフィルターです。
ハーフNDフィルターは、角型をしており専用のホルダーに取り付けて使用します。
角型をした形の上半分だけだNDフィルターとしての効果を持っており、下半分は
透明となっており減光効果はありません。
専用のホルダーに取り付けることによって、境目の位置を上下に調整することが
出来ますし、回転させることも出来ます。
上記は、Kenko製のHALF ND PRO Filter で、減光効果はND8のフィルターで巾が
100mmタイプになります。
これのみでは取り付けられませんので下記のホルダーが必要になります。
Kenko製の角型のハーフNDフィルターをカメラのレンズに取り付けて使用するには、
2つの部品が必要になります。
フィルターを取り付けるマルチホルダーとレンズの全面のフィルターネジに取り付ける
ためのアダプターリングが必要になります。
マルチホルダー100 アダプターリング
マルチホルダー100には、上の写真の左右の突起部分にミゾが付いており、このミゾに
フィルターを差し込んで両側から挟んで固定します。
アダプターリングは、レンズのフィルターネジにねじ込んで固定します。
購入の際は、レンズの口径に合ったものを選んでください。
マルチホルダー100とアダプターリングを合体させて準備OKです。
角型のフィルターは、ミゾの中を上下にスライドさせて境目の位置を調整することが出来、
またマルチホルダー100は360°回転させることが出来るようになっています。
ハーフNDフィルターの使い方のポイントは、フィルターの境目と被写体の明暗の境目を
正確に合わせて使用するということになります。
両方の境目がズレてしまうと、写真にしたときにフィルターの境目が目立ち、不自然な
仕上がりとなってしまいます。
なおフィルターの境目は直線ですので、被写体の明暗の境目もある程度直線的である
必要があり、被写体の明暗の境目が複雑な場合は使えないでしょう。
また使用するレンズにも注意する必要があり、広角レンズの場合は、写真にした場合の
フィルターの境目が分かりやすくなります。
フィルターの境目は、上記の写真のように境目が分かりにくくなるようグラデーションが
付けられていますが、広角レンズを使用する場合は、もっと緩やかなグラデーションが
付けられているソフトタイプもあります。
標準レンズと望遠レンズの場合は、上記の通常のもので境目は目立ちません。
ソフトフィルター
通常のレンズですと、ピントが合っている部分はシャープに写りますが、
ソフトフィルターをレンズの前側に取り付けて写しますと、ふんわりとした光に包まれた
感じに柔らかく写すことが出来ます。
特に花などをソフトフィルターを取り付けて写しますと、花の優しさを強調して
写すことが出来ます。
露出は少し明るめに設定して、背景もぼかして写すと効果的です。
左:Kenko Filter PRO SOFTON [B] ø55 右:Kenko Filter PRO SOFTON [A] ø72
上記のソフトフィルターを使ってアジサイの花を写してみました。
レンズ:TAMRON SP AF Di 90mm f=2.8 MACRO (フィルターなし)
レンズ:TAMRON SP AF Di 90mm f=2.8 MACRO
フィルター:Kenko Filter PRO SOFTON [B] ø55
レンズ:CANON MACRO LENS EF 180mm f=3.5 ø72 (フィルターなし)
レンズ:CANON MACRO LENS EF 180mm f=3.5 ø72
フィルター:Kenko Filter PRO SOFTON [A] ø72
Kenko のソフトフィルターにはいろいろな効果を演出出来るフィルターがあります。
種類の中に [A]と[B] がありますが、[B]が効果が強く表れ、[A]は効果が弱めになっています。
クロスフィルター
クロスフィルターの表面には、格子状の筋が付けられており、この部分に光源の光が
当たると四方に光条が広がります。
四方に広がるものや八方に広がるように筋が付けられたものもあります。
広がりの方向は、クロスフィルターを回転させることによって変えることが出来ます。